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【特集】日本のレーシングサイドカーの第一人者、渡辺正人氏を取材!

日本レーシングサイドカー協会会長の渡辺正人氏
オンもオフもトップレーサー
まさにサイドカーに魅了された男である

初めに

その時代時代で人気になるバイクはあるが、サイドカーほど、普遍的にライダー心をくすぐるバイクは他にないのではないか。そんなライダーの夢でもあり浪漫でもあるサイドカーの普及に努めているのが、日本レーシングサイドカー協会(JRSA)の会長をつとめる渡辺正人氏。みずから国内外のレースに参戦しながら日本のサイドカー文化を守り育ててきた業界の第一人者である。そんな渡辺氏に、サイドカーへの想いや出場したレースの思い出、そして協会のこれからについて語っていただいた。

日本レーシングサイドカー協会会長 渡辺正人氏

 

まずは協会について詳しく教えてください。

渡辺氏:JRSAは、2001年8月に発足したレーシングサイドカーの組織です。それまでフルスケールサイズサイドカーで活動を行ってきたJRSU(Japan Racing Sidecar Union)と、F4ミニサイドカー競技団体であったRKA(Racing Kneeler Association)という2つの団体が統合して誕生しました。レースのレギュレーションや主催者との交渉などを行なっていて、海外レースに出場する時の窓口も私がやっています。

 

db今年もレースに参戦されたそうですが?

渡辺氏:去年までは「Rising Sun Racing(ライジングサンレーシング)」という自分のチームの名前で出ていたんですけど、今年は協会がレースの団体であることを前面に打ち出そうということで、6名の会員と2台のマシンで参戦してきました。今回は資金をクラウドファウンディングで募ったんです。予定の半分ぐらいは集まったので、サポートカーの費用は払うことができました。交通費は自腹になることもあるから大変ですけど、誰かがやっていかないと。

db:大変じゃないですか!

渡辺氏:でもね、このLCRというマシンの基礎を作った熊野さんという方が日本の方なんです。そういう人たちが世界のサイドカーのレースの文化を作っている。だからこそ、日本でその火を消さないようにしたいというのが一番大事な使命だと考えています。その熊野さんの元レーシングサイドカーが私が乗っているゼッケン66です。

 

世界を駆け抜けてきた渡辺氏のマシン!サイドカーレースのレジェンド、熊野氏が乗っていたマシンだ!

db素直に「カッコいい~!」って感じます。コクピット、超狭いですね!私はいるかな(笑)

渡辺氏:乗ってみてくださいよ!

という事で初めてサイドカーのレーサーに跨ってみた!

dbこのポジション、きついですね!これは大変そうだ (^^;

 

 

db渡辺さん、サイドカーとの出会いを教えてください。

渡辺氏:オートバイ自体は子供の時から好きでした。ちょうど私らの世代って、「3ない運動」の全盛期なんですけど、免許を学校に預けずに乗っていたワガママな奴でした(笑)いろんなことをしていく中で、サイドカーのレースを見る機会があって。見に行ったら、これがスゴかった! すぐにライセンスを取って、次のレースの時にはもうグリッドに並んでいました。それが35歳の時です。最初は全然上手く乗れなくて、「こんなに難しいのか…」って考えていくうちに、ハマっていきました。岡山のレースではクラッシュしたこともあります。でもどんな事故だったか覚えていないんです、ヘルメット割れちゃいましたから(笑) ところがエンジンを2ストロークから4ストロークに積み替えたら、とたんに乗りやすくなって面白くなった。2005年には日本チャンピオンになりました。

dbそれはすごいですね!

 

海外レース出場

渡辺氏:

2007年には「マン島TT」っていうレースに出るためにマン島に行って、真ん中くらいの38位で無事完走し、生きて日本に帰ることができました。主催者からは順位よりも無事帰国することが一番重要だと言われていました。田舎の建売が買えるぐらいのお金を使ってしまいましたけどね(笑)。マン島のコースは何回走っても恐い。路面が悪いところは膝が離れるくらいバウンドするんです。だから2007年が最後。家族が次はダメだよって(笑)

dbマン島に出場したんですね!ご家族は反対するでしょうね!

 

2007年 マン島TT

2007年 マン島TT

dbそれで、2007年以降は、国内レースですか?

渡辺氏:そうですね。これまでに培った経験を競技人口を増やすためにどんどん押し出していこうと思ったんです。当時の石原都知事の声かけで始まった三宅島のイベントにも仲間と一緒に出ましたけど、乗りたいと思う人はなかなか出てこなくて。そういう活動を続けていく中で、また新たな夢ができたんです。アメリカで開催されている「パイクスピーク」に出たいという夢が。

dbアメリカ! それでアメリカまで行ったんですか?

渡辺氏:ええ、結局「バイクスピーク」には4回出ました。1回目はマン島TTで使用した600ccで出たんですけど、15,000回転の甲高い音で走るので「あの回転音はなんだ!」とバカウケでした!その後レギュレーションが変わってしまったこともあって2016年が最後のパイクスピークになりましたけど、海外の選手たちと交流が深まったのは良かったですね。

2013年 パイクスピークス

2013年 パイクスピークス

 

 

2014年 パイクスピークス

2016年 パイクスピークス

2016年 パイクスピークス

 

 

渡辺氏の愛機! NO66!

世界を駆け抜けてきたレーサー

カウルを外したマシン。エンジンはスズキだ。

ウラルの輸入販売

dbロシアのウラルというバイクも輸入販売してるんですよね?

渡辺氏:「Rising Sun Racing」で請け負っています。ウラルジャパンとの繋がりも強くなるメリットもあるので始めてみました。昨年は、ウラルジャパンからワークスマシンを提供してもらってレースに出たら完走優勝!2台しか出していないのでワンツーフィニッシュ。まだまだこれからですね。

db:そのレースはどのようなレースなんですか?

渡辺氏:サイドカーで走るオフロードレースです。今年はもっと速く走りたくて、サイドカーのモトクロスマシンを本場オランダから輸入し、ラリー用に改造して出場しました。残念ながらクラッシュして鎖骨骨折でリタイア。来年のリベンジに燃えていますよ。

db:オフロードをサイドカーでレースするなんて普通じゃないですね!パッセンジャーも大変でしょうね。一度生で見てみたいです。

 

渡辺氏の夢

db会長の夢を教えてください。

渡辺氏:

渡辺氏:10月の「浅間モーターサイクルフェスティバル」はロードで走る予定だったのですが、イベントが中止になってしまい走ることができませんでした。日本国内でロードレースを続けるモチベーションが下がってしまい、熊野さんから受け継いだマシンは、若手の選手に引き継ぎました。今後は、国内では若手の育成に力を入れ、自分は、海外を中心にレースを続けていくつもりです。ラリーの他に、来年10月にドイツで開催される予定の、サイドカーF2ワールドトロフィー(マン島TTと同様のサイドカーでのサーキットコースでの世界選手権)に誘われているので、それにチャレンジするか検討中です。2014年に出場したときは、世界ランキング9位だったんですよ。

http://www.fim-live.com/en/article/f2-sidecars-have-world-trophy/

2014年 FIM SIDECAR F2 WORLD TROPHY

2014年 FIM SIDECAR F2 WORLD TROPHY

才能のある子供たちの面倒も見てあげたいですね。2輪のレースでも、勝てずにくすぶっている子がたくさんいるんです。そういう子たちの将来を考えた時、サイドカーは近道だと思うんです。競技人口自体が少ないので、日本でトップクラスで走れるようになれば世界選手権にも推薦できます。「本当にレースがやりたい」という子たちに出てきてほしいですね。だからこそ重大事故を起こさないように、乗り方や整備の仕方、安全対策なんかもしっかり伝えていくつもりです。

dbなるほど。育てる事も取り組んで競技人口を増やす事も大切ですね。

dbこれからサイドカーに乗る人は最初にどこから始めたらいいですか?

渡辺氏:私の場合は、F4は乗っても絶対に勝てないとわかっていたので、F2から始めました。楽しむことも大事だけど、レースをやるからには勝ちたいじゃないですか。フレーム自体も昔から変わってないし、古いマシンだから勝てないわけでもない。でも、やっぱりお金はそこそこかかります。大変なことや面倒くさいことがたくさんあるので、それを乗り越えられる人間じゃないとなかなか楽しめないかもしれません。でも、そういうことまで全部ひっくるめて楽しめれば、サイドカーは最高!人生が面白くなりますよ。

2014年 FIM SIDECAR F2 WORLD TROPHY

db:渡辺さんを見ていると人生を思いきりエンジョイしているのが伝わってきました!その源がサイドカーなんですね!本日は長時間お時間をいただき素敵なお話も沢山うかがいました。初サイドカーも体験できましたし、充実の時間でした。本日はありがとうございました!

渡辺氏:こちらこそ、ありがとうございました!またお会いできる日を楽しみにしています!

 

 

2019年筑波サーキットで行われたMCFAJレースでの一コマ

協会選手たちの走り:筑波最終コーナー出口付近で撮影

日本レーシングサイドカー協会 ホームページ

Risingsun Racing ホームページ

 

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