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【特集】現役時代に数々の偉業を成し遂げた伝説のレーサー、手島雄介氏を独占取材!

「日本郵便Honda Dream TP」の チームマネージャー 手島雄介氏
彼は念願の「オートバイレースの国技化」に向けて精力的に様々な取り組みを行っている。

はじめに

レーサーとして国内で、そして世界を舞台に戦ってきた手島雄介氏。モータースポーツを愛して止まない彼は、引退後に自らのチームを立ち上げ、挑戦を続けている。念願のモータースポーツの国技化に向けて、さまざまな取り組みを行っている手島氏に、当時の想い出と現在取り組んでいる「日本郵便Honda Dream TP」の活動、そして未来の夢について語っていただいた。また日本郵便Honda Dream TPで活躍しているレーサー、小山知良選手と高橋裕紀選手から今年の振り返りと来年に向けてコメントを頂いた。

 

プロレーサーになったきっかけは?

db:バイクは9歳で始められたとか。デビュー戦で優勝されたんですね!

手島氏:優勝はしましたけど、当時はレーサーになりたいという気持ちはまったくありませんでした。3年生の時に父親からポケバイをプレゼントされたのがきっかけで乗り始めたんですけど、あくまで趣味としてでした。結局、5年生からはサッカー少年に戻りました(笑)。でも、モータースポーツが持っている独特の刺激が忘れられなくて、中学生に入る頃に父親に50ccのミニバイクを買ってもらい、高校からプロレーサーを目指す生活に変わりました。

db:SP忠男レーシングに入りましたよね!2000年でしたでしょうか

手島氏:はい。チームのライダーでもある小山知良選手が誘ってくれました。当時僕はSPクラスでした。そしてそこから上のクラスに上がっていくためのステップで「鈴鹿4時間耐久」があったんです。当時僕は17歳。コンビを組んだ三瓶陽介と「高校生コンビ」ということで周囲から注目も浴びていました。あのレースはシナリオ通りに進みましたね。とにかく最後まで攻め続けた。僕のラップがずっと他の選手より2秒ぐらい速くて、ラスト10分ぐらいでトップに立って優勝しました。

db:いきなり優勝!あの「バリバリ伝説」そのものですね!感動!!

手島氏:本当に嬉しかったですね。当時SP忠男では、毎週末ガレージに行って、移動して、整備をするという生活でした。いわゆる丁稚ですよね(笑)。修行期間は辛かったですけど、厳しさを教えてもらったことが今の僕の強みになっています。レースって99%は忍耐力ですから。すごくいい経験をさせてもらいました。

db:なるほど!

db:そして2013年にチームを立ち上げましたね!

手島氏:はい。モータースポーツに育てられた日本人として、いずれはチームを持って世界に挑まなきゃいけないと思っていました。そんな自分の想いや考えを言葉に発し続けていたら、NTSの生田目社長が「じゃ、一緒に夢を見るか」とおっしゃってくれてスタートしたんです。ライダーもいなかったんですけど、弟分だった岩田悟選手(所属チーム:Team ATJ)や小山知良選手(所属チーム:日本郵便 HondaDream TP)が「手島のためなら乗るよ」と言ってくれて。そしてメカニックさん達も集まっていただき、ようやくチームが完成しました。とにかくアジア選手権の開幕までに、マネージメントの仕事は一人でやらなきゃいけなかったので凄くハードでした。寝ずに仕事していましたね。

db:全部ひとりで!それは大変でしたね。丁稚時代に培った経験が生かされていますね!

 

世界に挑む事になった動機は?

db:手島さんがその「世界に挑まなくては」と決心したのが「モータースポーツに育てられた日本人として」と伺いましたが、そのきっかけはどの辺りにあったんでしょうか。

手島氏:はい。1つは、ライダーとしての反骨心です。以前、海外のチームと契約していた時期がありました。ある時先方から「日本人だから契約をやめる」って言われたことがあったんです。当時2台体制で、僕の方が成績は良かったんですけどね。それが引退のきっかけにもなったので「いつか絶対に世界に戻ってやる!」って思っていました。僕の身体にも日本人の熱い血が脈々と流れています。世界のモータースポーツで活躍している日本製のバイク達。日本の産業から生まれたその素晴らしいバイクで、日本人として世界と勝負したかったからです。そして日本のモータースポーツをもっともっと発展させたいです。

db:なるほど!なんか私の血も熱くなってきました!

 

モータースポーツの発展。そのために現在取り組んでいる事は?

db:世界に挑む事になったきっかけをうかがいました。では次に、それに向けて現在取り組んでいる事を教えてください。、

手島氏:私の夢は、モータースポーツの国技化です。そのためにもっといろんなことをやっていかないと、と思っていたタイミングで出会ったのが、日本郵便さんでした。日本で一番バイクを使って商売をされている日本郵便さんと、世界で一番バイクを売っているホンダが、パートナーシップを組むっていうのはすごく魅力的で。そのプロジェクトに携わらせてもらうことで、自分の夢であるモータースポーツの国技化が実現できるのではないか。そういう想いから、今活動しています。

db:バイクレースが国技化されたら最高です!日本はモータースポーツに対し冷ややかですよね。悪いイメージが少し先行している感があります。世界に誇れる素晴らしいマシンをホンダはじめ、ヤマハ、カワサキ、そしてスズキという4つのビックメーカーが存在する日本だから、モータースポーツを愛する人口も世界一になると良いなと思います

 

根底にあるのは愛と恩返し。レース以外の活動も精力的

db:そこで、手島さんはレース以外にも注目すべき活動をされてますね。それが「T.Pro親子バイク」。どのような活動なのか教えてください。

手島氏:2005年からやらせてもらっていますが、初めは開催できる場所がなくて苦労しましたよ。「バイク=危険」というイメージがあるからハードルが高かったですね。モータースポーツの事を一般の人たちに伝える前に私は交通安全の啓蒙から入りました。T.Pro親子バイク教室がそれです。今取り組んでいる子供たちに向けての活動は、僕にとってとても重要なんです。レーシングチームか、キッズ活動か、どっちを選ぶ?と言われたら、どちらもとても大切ですがキッズの活動を選ぶ可能性があるぐらいに。それくらい重要です。やはり“恩返し”という意味も含まれていますから。僕自身、両親にサポートしてもらえたから今の自分があります。感謝です。まずは少しでも多くの人たちに、親子のコミュニケーションツールとして、そして純粋なスポーツとして、そして交通安全のきっかけとしてモータースポーツを活用する事を提案していきます。そうする事でモータースポーツを取り巻く社会の考え方や見方も変わっていくし、レースも活きる。この活動はこれからもどんどんレベルアップしていきます!

db:なるほど!微力ですが私にもお手伝いさせてください!

db:人々に真実を伝える手段として、例えば、学校とか塾みたいな場所があっても良いと思いますが。

手島氏:まさに今、モータースポーツの学校のようなものができたらいいなと思っているところなんです。スイミングスクールのように気軽に足を運んで楽しく通える施設を。トップレーサーになれば英語も必要になってくるので英会話学校とのコラボもアリだと思います。さらに未来の話をすると、モータースポーツの分野でももっとAIが取り入れられ、そして発達していきます。しかしいくらAIが発達しても我々人間にしかできないこと、人間でなければダメな事はたくさんあると思います。五感の追求って、生きていく上での醍醐味でもあるので、そういう分野にも支援を入れてやって行きたいですね。

db:なるほど!素晴らしいですね!

db:今年の親子バイク教室を振り返ってみて、成果をお聞かせください。そして今後の展望はいかがですか?

手島氏:今年はコロナ禍でどこもイベントが中止になったりと、日程的にも不安定でしたが、有り難いことに全日本選手権が開催されたサーキットで、「ぽすくまの親子バイク教室」を3会場で開催できました。感染拡大対策を取りながらのイベントで通常より忙しくなることは多かったですが、その分ご参加いただいた方々の「楽しかった」や「バイク乗れてうれしかった」などの声をきけて素直に嬉しかったです。これからも試行錯誤をしながらバイクの安全な楽しみ方と手紙の大切さや温かみを伝えていきたいと思います。

db:ありがとうございます。行動すること、伝えること、そして続けることは本当に大切ですね!

 

db:コロナ禍で先が見えない時代ですが、今後、手島さんはどのようなステップを想定されていますか?

手島氏:そうですね。まずは、この「日本郵便Honda Dream TP」というチームに共感してくれる人たちを増やしていくことです。そして「親子バイク教室」をもっといろいろな形で展開させていきたいですね。常に新しいことにチャレンジして行きます。今年(令和2年)から、NTTコミニケーションズさんからも「一緒にやりましょう」と言って頂いています。僕らにできること、それはモータースポーツをどう活用してもらえるか、ということをモータースポーツ界と世の中の中間の立ち位置、つまり中立の立場で考えて伝えていくことです。今まで以上に、しっかりやって行くので、ぜひ注目してほしいです!

db:はい!期待しています!

db:本日は若い頃から世界を相手に戦ってこられた手島さんにお会いできて嬉しかったです。また貴重なお話を沢山うかがい、現役時代から変わらない熱い情熱で「モータースポーツの未来」を真剣に考えている姿に感動しました。手島さんは夢を実現する方だと分かりました。粘り強く、そして発想豊かに新しいものへ取り組みをされていますね。これからも手島さんの活動を応援しています。本日は貴重なお話をありがとうございました!

手島氏:こちらこそ、ありがとうございました!今度、「ぽすくまの親子バイク教室」にも遊びに来てくださいね。

 

 

手島雄介氏のコメント。2020年の振り返りと感謝、そして来期への想い

まずは今シーズン、コロナの影響で不安な状 況下の中でもご支援いただきました日本郵便 様 、Honda D ream様、NTTコミュニケー ションズ様をはじめ、多くのスポンサーさまと ご支援者の方に無事にシーズンを終えられま した事を深く御礼申し上げます。 結果としましては、当初の掲げておりました2 連覇2階級制覇を達成できず申し訳ござません で し た 。しかし 、チームや選手の頑張りでST600クラスで小山選手がランキング3位、 ST1000クラスで高橋選手が新設クラスの初代チャンピオンを獲得し、日本郵便Honda Dreamとしましては2年連続の全日本チャン ピオンを獲得することが出来ました。これも皆様の応援の賜物で御座います。 冒頭にもある通り今シーズンはコロナの影響でレースが開催されるのかもわからない中で不安と無力さを痛感するところからシーズンが始まったように感じてます。そんな中でもレースが開催され少しでも明るい話題を待ち続けて頂いた皆様に感謝しかありません。 人と同じ方向を一緒に見て、笑顔で会える貴重さと幸せを噛みしめております。 色んな立場の方々が一つになって初めてモー タースポーツのエンターテイメントになることを再認識した今、我々の出来ることで少しでも世の中にお役に立てる活動に一層の熱を加え邁進して参りたいと思います。 最後に日本郵便Honda Dreamへご協力頂きました全ての皆様、有難う御座いました。 そして我々からもチャンピオン獲得のお祝い を申し上げます。 おめでとうございます。これからもどうぞ宜しくお願い申し上げます。

手島雄介

中央:手島雄介氏

 

 

ST600クラス 小山知良選手のコメント

今シーズンも沢山の応援有難うございました。
チャンピオン連覇という大きな目標を立て挑んだシーズンでしたが、結果はシリーズランキング3位という結果でした。
我々のチームの実力はランキング3位という現実を受け止め、来季へ向けチーム一丸となり更に強くなって戻って来たいと思っております。
そしてオフシーズンの期間を有効に使い、自分自身のレベルを更に上げ、来年も皆様に興奮・ワクワクして頂ける様なレースが出来る様にしっかりと準備をしたいと思っております。来シーズンも引き続き応援宜しくお願い致します。

小山知良

ST1000クラス 高橋裕紀選手のコメント

応援頂きました皆様、2020年シーズン沢山の御声援ありがとうございました。
今年から日本郵便 Honda Dreamに移籍させていただき、新設されたST1000クラスを戦ってきましたが、皆様の本当に温かい御声援に後押しされ、開幕戦の優勝をはじめ、最終的に初代シリーズチャンピオンにも輝く事ができました。
これからも皆様への気持ちを走りに変えて精一杯頑張りたいと思います。

高橋裕紀

 

 

編集後記

今回の取材も素晴らしいご縁を頂き、ご多忙中にもかかわらず取材を快諾いただき実現した。取材場所は東京大手町にある日本郵政株式会社本社。手島氏は幼いころオートバイに出会い、プロを目指し、夢を実現してプロレーサーになった。そして今も熱い思いを持ち続けて次のステージを確実に歩んでいる。自身の置かれている立ち位置は「自分が努力したから」よりも、親のおかげ、仲間のおかげ、協賛企業のおかげ、自分を取り巻くみんなのおかげ、と常に感謝の念を抱き行動している人だ。そこを目の当たりにして、「こうゆう人がモータースポーツの次世代を担う人たちを育て、そして世に伝え続ければ、必ずモータースポーツの国技化は実現する!」と確信した。ワクワクが止まらない!今後も手島雄介氏の活動を発信し続けていきます。乞うご期待。

 

関連サイト

ぽすくまの親子バイク教室

株式会社ティー・プロ・イノベーション(代表:手島雄介 本社:埼玉県さいたま市)

日本郵便×Honda Dream

NTS 生田目社長

 

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