ハイパワーとロングライフは両立する!
TGN 中川商会(Trading garage Nakagawa)
今回私たちは静岡県富士市天間にある、TGN中川商会(Trading garage Nakagawa)を訪問し、代表の中川和彦社長のお話をうかがった。今回中川社長とのご縁を繋いてくれたのは、以前取材したプライベートレーサーの堀江昭氏である。中川社長は堀江氏所有のレーサー、ニンジャのチューニングを手掛けている。また中川社長はRacer’s hackの取材第1回目に登場したタロウモータース代表谷津太郎氏やマン島TTレーサーの山中氏とも親交があるTGN中川商会は公道用マシンのクオリティの高いカスタムは勿論の事、質の高いレーサーを仕上げるチューナーとして業界では有名な存在である。若いころ、寝る間も惜しんで仕事に没頭した中川社長。その叩き上のスキルと技術が今多くのレーサーやライダーの支持を得ている。今回中川社長率いるTGN中川商会の実力と魅力を思う存分取材することができた。
中川社長とTrading garage Nakagawaの歴史
創業25年 元々Trading garage Nakagawaは中川商会の名称で、某4輪チューニングメーカーでタービンの組み換えなども行っていた。TGN中川商会2代目である中川和彦社長は、高校を卒業してから23歳ころまで、その4輪チューニングメーカーで日々タービンや物流の仕事に携わっていた。日中まるで丁稚奉公のようにメーカーで汗を流し修行し、夕方からは中川商会でタービンの組み換え作業をしていた。多い時で日に100機のタービンの組み換え作業をしていたそうだ。
平成元年当時は日産のGTR、RB26が出た頃で、飛ぶ鳥を落とす勢いのGTRの影響でタービンの作業が多かったそうだ。その後26歳ころから某4輪メーカーのラリー選手権のエンジンに携わるようになった。またヤマハYZF750のエンジンのクランクの研磨やポート研磨などの仕事も任されるようになっていた。
ある時、TGN中川商会の元社員から、アメリカにあるパフォーマンスマシン社のホイールを仕入れて日本で売らないか、とオファーが来た。その頃日本はカスタムブーム全盛期でパフォーマンスマシン社のプレスホイールというワードは時代的に最高のマッチングであった。またパフォーマンスマシン社の出荷や制度もしっかりしていたので、輸入販売を開始する事となった。Trading garage Nakagawaの中にある「Trading 」は、アメリカとの輸出入により、「良いもの同士が繋がる事業形態」という意味合いから名付けられた。
とは言え、中川社長はエンジンに長年携わってきた職人気質の匠。「エンジンをやりたい!」が本音であった。当時TGN中川商会にはシャリーやモンキーやカブのエンジンが100機くらい山積みになっていた。先代はそれらのエンジンを溶かしてインゴットにする仕事をしていた事もあり、本格的にエンジンチューニングに入る事ができた。当時Ninjaのエンジンを手掛ける機会もあった事、またチューナーとしてカワサキのマシンに魅力を感じていたこともあり、Ninja業界の方々にお世話になりながら鈴鹿8時間耐久のエンジンも手掛け、エックスフォーミュラクラスで8耐に参戦した。バイクの世界に本格的に入って行ったのはその頃からであった。
中川氏のこだわりと商品開発
中川氏が目指すエンジン、それはどこにも負けないパワー、そして長いlife。カワサキのエンジンはクランク・コンロッド・ピストンなどもパーツを兄弟バイク同士で使える事から様々な組み換えや多様な使い込みができる。そして他のメーカーにはないタフなクランクケースやクランクがあった。そこに中川氏は手を加え、さらに丈夫にして強靭なマシンづくりを目指していった。中川氏には1108ccや 1052ccなど、ライナーの組み換えで安定させることに関しても、どこのメーカーにも負けないという自負がある。また、中川氏は数多くの特許を取得しており、オリジナルパーツも数多くある。
「長く楽しんでもらうために」が中川氏の信念であり、その為に中川氏は多くの商品を開発し続けている。それら優れた商品開発の原動力は中川氏のもとに来るレーサーや一般ライダー達のマシンである事は言うまでもない。彼らのマシンが訴えかけてくる内容を中川氏は聞き逃さず見逃さず感じ取る。今まで培ってきた知恵の引き出しを開けて個々の問題に真正面に向き合い真摯に取り組む。そこでやるべきことが見えてくる。そんな想いと行動力が多くの商品を開発してきたのである。中川氏は言う、「僕にとってこれは自然な流れですよ」そして「ライダーの意見とマシンが発する”声”が全てですよ」と。中川氏は、ライダーの意見を聞き、マシンと対話し、問題を解決するために自身の「どうしたら実現するのか、叶うのか」に心を傾け、「実現」を信じて行動し続ける。そのスタンスで生み出されたのがTrading garage Nakagawaのエンジンチューニングメニューである。当時、一般常識では、Ninjaで1108ccを安定化させるなど難しく、周りからはブローさせて終わりだと言われていたが、そのようなネガティブな声に耳を貸すことなく、信念をもって取り組み、ついに完成させたのである。今では多くのチューナーが中川氏の手法を参考にしている。
Trading garage Nakagawaのコンプリートマシン&カスタム車両
コンプリートマシンは勝つために造ってきた車両だ。プロレーサーにライディングしてもらい優勝してきたマシン達である。コンプリートマシンは極限状態の中で開発される。練りに練った所とセーブされた所の、ほんの少しのハザマのギリギリのところ、そんな限界域でマシン造りは進められる。例えば、「極限状態はレブここまで上げられる、しかしマージンも考えないとならない。」ぎりぎりの駆け引きのハザマで、レブをあと500回転上げたい、800回転上げたいと思っても上げられない事もある。上げてはならない事もある。またライダーとの相性も混在する。極限状態の中で造りこまれたからこそ、ハイパワーでLIFEの長いマシンが出来上がる。そんなコンプリートマシンのノウハウがTrading garage Nakagawaのマシンたちには詰め込まれている。
中川社長の夢
db:お話を伺い、中川社長率いるTrading garage Nakagawaのファンになりました。これからも多くのレーサーやライダーを楽しませてもらえるようお願いします。本日最後に、中川社長の夢をお聞かせください。
中川社長:そうですね。Trading garage Nakagawaを訪れてくれるお客様は、サーキットを走っている方、ワインディングや走行会を走る方と様々です。そしてその方々が末長く楽しくやって行けるようにサポートができる会社であり続けたいと思っています。マシンをいっぺんに仕上げるのではなく、一つ一つを丁寧に仕上げて何年もかけて徐々にマシンを仕上げていく。そしてお客様のマシンが特別なオンリーワンで、その方専用のコンプリートマシンになっていく。ライダーが楽しく乗って行けるマシン、そんなバイクライフを提案できるTrading garage Nakagawaであり続けたいと思っています。私はなるべくならお客様にはマシンやパーツを度重なる仕様変更させて2度3度と買い替えさせる様な事をさせたくないんです。だって余計なお金がかかって大変ですからね。まずはお客様が最終的にどこを目標にしたいのかを把握してマシン造りを提案したい。
私は日ごろスタッフに伝えている言葉があります。それは、我々が出した見積もりにお客様がOKをくれて造るものは、仕事で120%返さなくてはならない。つまり100%のお金をいただいたら120%の仕事をしてお返しをするということ。私たちTrading garage Nakagawaはこれからもこの想いを持ち続けて、サーキットはサーキット、ストリートはストリートでお客様皆様がそれぞれに安心して楽しくワクワクドキドキしてもらえるようなマシンを1台1台きちんと造り続けていきます。
db:ありがとうございます!本日は貴重なお話を伺うことができました。中川社長のマシン造りの理念、そして挑戦秘話を聞いて自分のエンジンも組んでもらいたいな!って正直思いました。今後ともオートバイ業界、モータースポーツ業界を盛り上げていただくためにも引き続き中川スピリッツでチャレンジし続けてください。本日は長時間ありがとうございました!
中川社長:はい!ありがとうございました!
取材後記
今回、長年にわたりモータースポーツ界に貢献してきた中川社長の貴重なお話をたっぷり聞くことができた。ここに書ききれないほど内容の濃い取材をさせてもらった。いろんな業界の「凄い人」達全員に共通して言えることだが、中川社長が壁にブチ当たった時、立ち止まりそうになった時、自身のモチベーションの取り方が実に前向きで、自分の夢をあきらめさせる言葉に耳を貸さず、信念を通し、マシンを信じて歩んで来た姿に感動した。Trading garage Nakagawaは、多くのレーサーやライダーが快適に楽しくバイクライフを送るための想いと技術にあふれている。一大決心して購入したバイク、勇気を振り絞って始めたサーキット走行、タイムと向き合ってコンマ何秒と戦う練習、表彰台を目指して徹夜でマシンの調整、等々、シーンは様々。Trading garage Nakagawaでは旧車のエンジンチューニングの他、足回りやそのほかマシン全体のチューニングやセッティング、また最新SSのセッティングなども行っている。レーサーやライダーの個々の目標に合わせてトータルチューニングをしてくれる。オリジナルの開発商品も魅力的だ。マシンのセッティングで悩みあきらめかけていた人も中川社長に相談したら解決の糸口が見つかるかもしれない。
妄想的独り言
TGN中川商会の取材が終わり、新東名で帰路についた。
背後から迫ってくるエグゾーストノート。
旧車Z1000。追い越し車線に進路を変え加速しだした。
軽く前傾をとったライダー。スモークシールドの奥で上目使いで前方を見つめる表情がイメージできる。
レブ目掛け瞬時に跳ね上がるタコメーター
回転を落とすことなくクロスミッションを小気味よくチェンジアップする。
力を蓄えたエグゾーストノートがより一層力強くサイレンサーから吐き出される。
「パァーーーーーーン!!」
私の車の前には、 Zに跨った私が心地ちよさそうにライディングしている。
「気持ちいい~~❣」(^^♪
帰り道、私は中川社長の話に影響されて妄想族となり、夢中でZ1000を駆っていた(笑)
TGN中川商会(Trading garage Nakagawa)
代表:中川和彦
所在地:〒419-0205 静岡県富士市天間1928-7
TEL:0545-71-3032/FAX : 0545-71-0811
メール:tg-nakagawa@thn.ne.jp
HP:http://www.tg-nakagawa.co.jp/
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