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【特集】PRIDE ONE代表・和田功一氏

老舗レーシングスーツメーカー「PRIDE ONE」代表・和田功一氏に単独インタビュー!

今回の取材は千葉県白井市にある、ネックエアバック日本TOPシェアであるPRIDE ONE(プライドワン)にお邪魔して代表の和田氏から貴重なお話を伺うことができた。

プライドワンはレーサー必須のアイテムの一つ、レーシングスーツの企画・開発・製造・販売を行う創業30年を超えるレーシングスーツメーカーの老舗である。

PRIDE ONE代表 和田氏

プライドワン代表 和田功一氏

 

今回和田氏とのご縁を頂いたのは、タロウモータースの谷津太郎氏だ。

2019年8月4日に行われたmcfajのレースで優勝した谷津太郎氏もプライドワン社製のレーシングスーツを着てレースに臨んでいる。安全を身にまとった事でサーキットの走りに集中できるそうだ。

左:タロウモータース代表 谷津太郎氏  右:プライドワン代表 和田功一氏

左:タロウモータース代表 谷津太郎氏  右:プライドワン代表 和田功一氏

 

プライドワン創業以来、代表和田氏のぶれる事のない熱い想い。
それは「レーサーの安全」と「レーシング業界の繁栄」だ。
そのためにレーシングスーツの品質と性能の向上、そして求めやすい価格帯を追求し続けている。

今回取材して分かったことの一つ、それはプライドワンはもはや「レーシングスーツ屋」というよりは「エアバックスーツ屋」であるという事。プライドワンではミニバイクレーサー用にエアバック無しのレーシングスーツも提供しているが、それらのスーツを加えても、ロードレース用レーシングスーツ販売総数の実に99%がエアバック付きのレーシングスーツとなっている!さすがネックエアバック日本TOPシェアである。

国内外のメジャーメーカーもエアバックに取り組んではいるが、プライドワン和田氏のレーシングスーツに対する想いと取り組み方が我々ユーザーにとって本当にありがたいもので、結果素晴らしい商品を世に送り出している。「安全に対する考え」と「安全を普及させる道」が他とは根本が違うのである。

 

プライドワンの歴史

プライドワンのレーシングスーツはサーキットからのフィードバックが基となっている。
そしてその歴史は30年になる。

筑波サーキット内のプライドワンブース(mcfajレース時)

筑波サーキット内のプライドワンブース(mcfajレース時)

「1991年のレーシングハンドブック」の表紙を飾るライダーがまとっているレーシングスーツがプライドワン社製のスーツだ。(その当時市販レーサーrs125 rs250のハンドブックでライダー諸君のバイブル的解説本)

1991年のレーシングハンドブック

以前はOEMでレーシングスーツを制作していた。ただし和田氏と個人的につながりのある人には「プライドワン」として製作していた。

2007年にメインのOEM依頼先が廃業したのをきっかけに本格的にプライドワンを始動させた。そして2008年にカンガルー革にショルダースライダー装着のスーツを開発し、全日本に出場しているレーサーに提供して高い評価を得た。

完成度も高く、当時としては珍しいカンガルー革を使用し、”アルミ製”ショルダースライダーも装着されていた。(アルミ製は日本初である)

ショルダースライダーは飾りではない。ショルダースライダーを未装着であったり、スライダーの素材が適切でないと転倒した時に、肩が路面に食われその作用で鎖骨や肩を損傷するリスクが高くなってしまう。骨折などの怪我を防ぐ目的で、よりスベリの良い素材(メタル)のスライダーを装着しで力を逃がすのである。

そのスーツはまるでMoto Gpレーサーが着るスーツの様であった。

当時としてはユニークな素材と造り、そして高いクオリティにバイク雑誌も注目していた。
日本で最初にショルダースライダーを装着したのも和田氏が開発したものである。

現在のモデルに使われている金属製ショルダースライダー

現在のモデルに使われている金属製ショルダースライダー

その注目を浴びたスーツ、いくらで販売できるか試算してみると、なんと30万円を超してしまった。
当時クシタニの吊るしで一番高額なもので27万円で、それより高額になる。
幾ら良いものを造っても日本のメジャーメーカーのスーツより高額では売れない。
いくら良くても売れなければ安全性を広めることができない。
その時和田氏はMane in japanの限界を知ったという。

 

そして考え抜いた結果和田氏が出した答え。
それは
以前より和田氏はOEM生産の他にそのメーカーの廉価版スーツ工場を長年にわたり技術指導していた経緯で韓国に人脈もあり生産工場とのパイプもあった。韓国の革製品の縫製ラインの技術は実は高い。技術の高い理由はこなしている数が圧倒的に多く、ヨーロッパへのレーシングスーツを含むモーターサイクルウェア製作の豊富な経験があげられる。よってレーシングスーツの生産クオリティが決して低くない。そして普及にダイレクトに影響する価格の部分でも国内生産に比べると生産コストを抑えることができる。2009年から韓国でプライドワンのレーシングスーツの生産が始まった。

一般的に多くのメーカーが提供する低価格帯のレーシングスーツは海外にある第3者の工場に委託して生産し輸入して販売するケースが多い。いわゆる委託生産である。

一方プライドワンの場合は、韓国工場のラインをレンタルし和田氏の厳格な管理下で生産させている。

7割がた和田氏の管理下で完成させその後日本に輸入して国内で和田氏が直々に仕上げ完成させる。結果、ハイクオリティなレーシングスーツをメジャーメーカーの同等スーツより10万円も安く提供する事が可能となった。

我々消費者にとって実にありがたいことである。

 

また、現在のバイクは高性能すぎて公道でポテンシャルを発揮する事ができない車種が多い。

それと、以前レースが低迷していたころ、サーキットが暇で安く貸し出した時期があった。バイク屋さんたちが共同してサーキットを借りてユーザーを走らせたのが走行会の始まりであり、今では走行会文化が盛んである。レーサーのみならず、走行会でサーキット走行を楽しむライダーからのレーシングスーツのオーダーが増えいる。

考え抜いた結果和田氏が出した答え

プライドワンのエアバックの方式は?

レーシングスーツはレーサーの体を守る鎧であるが、スーツの革一枚で安全性を確保するのは難しい。そこで一般的にレーシングスーツ内部に脊髄パットや肘・膝のプロテクター、そして胸部や各所にクッション材などが装着されているが、首は守れなかった。どうやっても。
やはりレーサーの頭と首と脊髄を守る事が重要である。致命傷となる確率が高いからである。
頭が割れた、首折れた、脊髄を損傷した、なんて事になると大変なことになってしまう。
頭を守るヘルメットはとても優秀である。
脊髄のプロテクターも優秀なものがある。
ところが首だけは守る術が無かった。
「ネックエアーバック」以外には。
2006年頃、RSタイチさんとhit-airさんがコラボレーションして開発したこのネックエアーバックを目の当たりにして和田氏は首を守れるシステムに大変驚いたという。
そして2008年にプライドワンはhit-airと契約をし、本格的にネックエアバック付レーシングスーツの開発に取り組んだ。
2012年シーズンより全日本ロードレース選手権JSBクラス・J—GP2クラス・ST600クラスに供給開始、現在も継続して全日本ロードレース選手権にて開発を進めている
また、全日本ロードレース選手権にネックエアバッグ内蔵レーシングスーツを供給・開発している唯一のメーカーでもある。
メーカーのエアバックの中には一度作動させると復旧させるのに3万円以上費用を要するものもある。一方プライドワンのネックエアバックはエアバックを作動させても復旧は自らの手で行うことが可能で、ボンベ代も千円台と安価なのでプライベートでサーキットを走るレーサーやライダーにとって実にありがたいシステムである。

その他コレクション

2018年世界耐久選手権を戦ったレーシングスーツ

2018年世界耐久選手権を戦ったレーシングスーツである。
Moto gpで多用されているkangaroo(カンガルー)革で製作されており、
国内メーカーで製作できるのはプライドワンだけである。

 

和田氏の想い

私の願い、それは「レーサーの安全」です。
そしてその安全をもっともっとこのレーシング業界に普及させたい。
今では当然国内のメジャーメーカーもエアーバック付きのスーツを販売しているが、オーダーで、エアバック付き、色をオーダーして、名前を付けて、40万~50万円になる。
40万~50万円になると多くの人の選択肢から外れてしまう。
選択肢から外れたのでは「安全」の普及につながらない。
いくら良いものでも売れなければ何の役に立たないんですね。
普及させてレーサーの安全に貢献したくて、私たちは30万台で市場に送り出しています。

db:和田さん、最後にレーシングスーツを通じて和田さんの目標を聞かせてください。

和田氏:「私の目標ですか?そうですね~。近い未来、サーキットのグリッド半分を、ウチのでなくても良いからエアバックを使っているレーサーが占めるようにしたいですね。できれば全てのレーサー達がエアバック付きのレーシングスーツを着てサーキットを走る日が一日も早く来るようになれば良いな。そして各レーシングスーツメーカーも、スーツ本来の目的である「安全」を基軸にレーシングスーツの開発と製造に取り組んでもらいたい。もちろん求めやすい価格で普及させてほしいですね。」

 

作品一例

作品一例01

作品一例02

作品一例03

作品一例04

【編集後記】

今回ご縁をいただきプライドワンの代表である和田氏から貴重なお話を伺えた。

レーサーやライダーの身体を守るレーシングスーツに対する想いを聞いて改めてプライドワンで自分のレーシングスーツもオーダーしたいと素直に思った。

以前、他のレーサーから聞いた話だが、プライドワンのお客様は鎖骨の骨折も少ないそうだ。ネックエアバックは首を守るのは勿論だが、ヘルメットで鎖骨を強打する事も防いでくれる。

また先にも述べた通り、転倒すると肩が路面に食われて鎖骨骨折に繋がってしまう。それを防ぐために1994年にショルダースライダーの原型である、リベットパットという鋲を肩部分に取り付けたのも和田氏が初めてであった。

また、今では当たり前になった空力抵抗に貢献する背中のコブも1993年に和田氏がヤマハと共同開発している。

「プライドワンの性能とクオリティでこの価格はどこにも負けない」と胸を張る和田氏。

そして、「レーシングスーツは怪我に直結するのでコストダウンして性能を落としてはいけない所があるんです!」「それを守らないメーカーさんが多いのも事実です」と業界を案ずる言葉もあった。

今回2時間弱の取材で、和田氏のレーシングスーツに対する理念が伝わってきた。

取材で事実を目の当たりにして、その言葉は誠であると確信した次第である。プライドワンは創業当初からとにかく「初」の取り組みが多い。

その基となるのが和田氏の考えである「ライダーの安全のため」であることは言うまでもない。良いものを安く提供して世に安全を広める。

そのハートとシステムがプライドワンにはある。

Double boxはこれからもPRIDE ONEを応援します!

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